板バネに使われる材質
板バネに使われる材質は用途によっても細かく分かれますが、よく使われる材質についてのみ紹介します。まず、物理的に押さえたり、挟んだりするための板バネには、「炭素鋼」「ステンレス鋼」の2つがよく使われます。ステンレスは「SUS304」、炭素鋼は「リボン鋼」もしくは「SK5」「SUP10」などに熱処理を行い硬化させて使用します。もう1つは、接点として使用する板バネには導電性とばね性が必要になるため、バネ特性を持った銅系の材料が使われます。代表的なものが「リン青銅」「ベリリウム銅」となります。また、温度変化により形状が変化する「バイメタル」や「トリメタル」なども使用されることがあります。
取り扱い材料
鉄系 | SK(生・焼き入れリボン鋼) |
ステンレス系 | SUS304:BA、1/2H 3/4H・H・EH |
SUS301:1/2H・3/4H・H・EH | |
SUS316、SUS631、SUS430、SUS410 | |
パーマロイ材 | 42アロイ、50アロイ、インコネル、インバー |
銅系 | C1100P(タフピッチ銅) |
C2801(真鍮) | |
C5210P(りん青銅板二種)、C5210(バネ用りん青銅板) | |
C7521(洋白板二種)、C7701(バネ用洋白板) | |
C1700/C1720(バネ用ベリリューム銅) | |
その他 | チタン、チタンバネ、モリブデン |
弊社へのご質問の多い材質、またはご依頼いただく製品の主流材質の性質を記載していますので参考にしてください。
1)バネ(ばね)用ステンレス鋼帯(SUS-CSP)
ステンレス系の薄板・板金パーツや、ステンレス系板バネにはSUS304-CSPが最もよく利用されていますが、板バネにはバネ特性の低い順に1/2H,3/4H,Hと一般的には、3段階で、用途に応じて使用されています。
また、SUS304 CSPよりさらに高いバネ特を要する板バネには、SUS301 CSPを使用しています。SUS301もSUS304と同じくバネ特性は一般的に3段階で用途に応じて利用されています。
種類の記号 | 調質記号 | 硬度 (Hv) | 引張強さ (N/mm2) | 伸び (%) |
SUS301CSP | 1/2H | 310以上 | 930以上 | 10%以上 |
3/4H | 370以上 | 1130以上 | 5%以上 | |
H | 430以上 | 1320以上 | - | |
EH | 490以上 | 1570以上 | - | |
SUS304CSP | 1/2H | 250以上 | 780以上 | 6%以上 |
3/4H | 310以上 | 930以上 | 3%以上 | |
H | 370以上 | 1130以上 | - | |
NSS431 DP-2 | - | 340~400 | 1200(参考値) | 9%(参考値) |
SUS420J2 | O | 210以下 | - | - |
析出硬化系 | 調質記号 | 硬度 (Hv) | 引張強さ (N/mm2) | 熱処理後硬さ (Hv) |
NSSHT1770 | - | 280以上 | - | 450以上 |
SUS631CSP | O | 200以下 | 1030以下 | 345以上 |
1/2H | 350以上 | 1080以上 | 380以上 | |
3/4H | 400以上 | 1180以上 | 450以上 | |
H | 450以上 | 1420以上 | 530以上 |
2)バネ(ばね)冷間圧延鋼帯<SK材と熱処理材(焼き入れリボン鋼)>
鉄系板バネとしてはSUP材となりますが、薄板バネ材としては入手困難な板厚もありますので、弊社ではお客様ご承諾の上、類似材として曲げ成形の多い板バネにはSK材(生材)を使用し、成形後焼き入れ焼き戻しの処理を行い、主に平板の形状カットのみの板バネには焼き入れリボ鋼をよく使用しています。
Sk材とはバネ用炭素鋼帯の一種で、焼入れリボン鋼とはバネ用炭素鋼帯に熱処理(焼入れ焼戻し)を施して製造される焼入鋼帯で、主に薄板バネや、ゼンマイバネ、刃物に使用されています。
種類の記号 | 焼きなましをしたもの | 冷間圧延をしたもの | 焼き入れ焼き戻しをしたもの |
---|---|---|---|
SK5-CSP | 190以下 | 230~270 | 350~500 |
SK4-CSP | 200以下 | 230~270 | 400~600 |
(単位:HV)
3)銅・銅合金・銅合金バネ材
りん青銅・バネ用リン青銅板(C5191P・C5210P等)
市場の通電性重視の製品にはC5191がよく利用されていますが、バネ性を要する接点・端子・板バネ製等にはC5210が利用されています。
ベリリウム銅板(C1720P等)
リン青銅バネ材より高性能なバネ特性を必要とする場合C1720P(バネ用ベリリウム銅)がよく利用されています。用途としては、携帯電話部品を始め、ブラシ、コネクタ、接点、電気機器用薄板バネ部品などによく用いられます。
洋白(C7521,C7701)
洋白(C7521)は耐食性に富みシールドケースなどに利用され、優れた強度とバネ特性(C7701)から電気機器材料として用いられています。また銀白色の美しさから装飾用等にも広く用いられています。
種類の記号 | 調質記号 | 硬度(Hv) | 引張強さ (N/mm2) | 伸び(%) |
C5191(りん青銅2種) | 1/2H | 150~205 | 490~610 | 20%以上 |
H | 180~230 | 590以上 | 8%以上 | |
C5210(バネ用りん青銅) | 1/2H | 140~205 | 470~610 | 27%以上 |
H | 185~235 | 590以上 | 20%以上 | |
C7521(洋白2種) | 1/2H | 120~180 | 440~570 | 5%以上 |
H | 150~210 | 540~640 | 3%以上 | |
C7701(バネ用洋白) | 1/2H | 150~210 | 540~655 | 8%以上 |
H | 180~240 | 630~735 | 4%以上 | |
C1700(ベリリューム銅) 時効効果処理後 | 1/4H | 330~410 | 1100以上 | 2%以上 |
H | 360~430 | 1230以上 | – | |
C1720(ベリリューム銅) 時効効果処理後 | 1/2H | 345~430 | 1180以上 | 2%以上 |
H | 380~450 | 1270以上 | – |